今日は、2000年の12月第3週のオリコンシングルランキング登場作品をレビューしていきます。

まずはTOP10から。


*1位 サボテン / ポルノグラフィティ
(週間売上:13.0万枚)

僕が触れた指先にそっと
柔らかいトゲが刺さる

初登場。前作「サウダージ」に続き、首位獲得。登場週での首位獲得はバンド史上初。
この年「ミュージックアワー」「サウダージ」と立て続けにロングヒットを飛ばし、バンドの人気が上昇した。その締めとしてリリースしたのが今作。元はインディーズの頃からあり、長く暖めていた曲である。
前2作に比べると地味な印象ではあるが、非常に深みのあるスルメソング。
アコースティックなサウンドの中で、どことなく切ないギターリフが雨の情景を浮かばせる。
倦怠期のカップルを見守るサボテンを描いた歌詞の世界観も見事にハマっている。
★★★★★★★☆☆☆

*2位 Everything / Misia
(週間売上:12.6万枚)

やさしい嘘ならいらない
欲しいのはあなた

登場7週目。月9ドラマ「やまとなでしこ」主題歌。ミリオンヒットし、自身最高の売上を記録。
日本の音楽業界にR&Bというジャンルをシーンに広めた立役者。ドラマの話題性もあり、彼女にとっての代表的なバラードとなった。
これまでは、R&B特有の歌い回しが細かく難しい曲を出してきた印象だが、これに関して言えば、特にクセがなくシンプル。ゆえに、カラオケなどでも歌いやすく、練習すれば上手く聴こえるように見えやすい曲である。そのことも人気に火をつけた要因だろう。
リリースした当時は少し長く退屈だなと思っていたが、15周年にリリースしたベスト盤にリマスターされて収録されたものを聴いて、心地よさに気づいた。この時期にお世話になりたい名曲。
★★★★★★★☆☆☆

*3位 even if / 平井堅
(週間売上:8.6万枚)

鍵をかけて 時間を止めて
君がここから離れないように

初登場。自身初のTOP3入り。
この年、デビュー5年目にして「楽園」が大ヒット。アルバムもミリオンを記録した。
自身のライブ「ken's bar」のテーマソングであり、そのコンセプトに基づいて、酒やバーが出てくる大人のラブソングに仕上がった。
歌詞描写や歌い方、アレンジが冬の落ち着いた空気を連想させるものになっていて、全体的にいいムードを出している。
彼の今後リリースするバラードナンバーのプロトタイプとも言える佳曲。
★★★★★★☆☆☆☆

*4位 Amploud/静かな日々の階段を / Dragon Ash
(週間売上:6.2万枚)

Make mo' noise
Garra Make some noise

登場2週目。「Lily's e.p.」として2曲A面シングルでリリース。
ロックバンドにヒップホップの要素を入れたスタイルで、前年に飛躍的に知名度を上げたが、ヒップホップ界隈では批判(ディスり)も起こりはじめた頃であった。
「Amploud」の方はヒップホップ色満載で、プチョヘンザッ!って手を振りたくなるナンバー。ロック主体のトラックで、グルーヴ感がハマっていてカッコいい。
「静かな日々の階段を」は優しいスロウナンバー。こちらもやや歌い方はヒップホップだが、アコースティック主体のトラックとマッチしている。
当時、若手アーティストの先頭に立っていた彼ら。その勢いがこの作品に滲み出ている。
★★★★★★☆☆☆☆

*5位 NEVER FADE / THE ALFEE
(週間売上:6.0万枚)

変わらない夢 追いかけて
素晴らしい日々 迎えよう

初登場。通算48枚目のシングル。
ベデランバンドの域にある彼らの1年4ヶ月ぶりの新作。ギター高見沢作お得意のエールソングであり、リードボーカルの桜井の歌声に見事にハマっている。
イントロから色彩が一気に広がるような派手さがあり、バンドサウンドにキーボードのアレンジが目立っている。
あまり面白味はないが、いつものアルフィーらしい一曲になっている。
★★★★☆☆☆☆☆☆

*6位 岬 / ロンドンブーツ1号2号
(週間売上:4.6万枚)

ボクと君は岬へ行く
カーステレオで T-Rex

初登場。本人達が主演のドラマ「新宿暴走救急隊」主題歌。
お笑いとして成功している彼ら、田村淳はV系バンド「jealkb」としても活動しているが、純粋な音楽デビューはこれが最初。
作詞作曲は当時ハイロウズのマーシーこと真島昌利。渋いイントロや広がりのあるパンキッシュなサビなど、彼の独特な作風が如実に表れている。
後年は主演ドラマと共にネタにもなっているが、曲としてのクオリティーは高いものがある。
★★★★★★☆☆☆☆

*7位 I WILL GET THERE / J-FRIENDS
(週間売上:4.4万枚)

行き先を告げる
希望のベルが聞こえるかい?

登場2週目。ジャニーズ(TOKIO、V6、KinKi Kids)のチャリティーユニットとして、今回がミニアルバム含めて4作目。
元々はBoyz Ⅱ Menが1998年にリリースしたナンバーで、そのカヴァー作になる。
歌い回しや後半のフェイクなどは、当時の洋楽界の中心であったR&B系のバラードそのもの。
J-FRIENDSの一連の曲は提供作家が殆ど海外ミュージシャンだけあって、異色と呼べる作品が多かった。
ポップ好きな日本人にはなかなか馴染みが薄く、あまりパッとしなかった印象だが、アイドルとしては攻めた曲を出したなと思う。聴きこむほど良さが分かる佳曲。
因みに、この曲のソングライターのDiane Warrenは、映画「アルマゲドン」のテーマソングであるAerosmithの「I Don't Want to Miss a Thing」も手がけている。
★★★★★★☆☆☆☆

*8位 さよなら大好きな人 / 花*花
(週間売上:4.2万枚)

もう かえってこない
それでも 私の大好きな人

登場7週目。同時発売のアルバム「2 souls」にも収録されたが、シングルの方がロングヒットを記録した。
メンバーのこじまいづみが亡くなった祖父に宛てた曲で、喪失をストレートに歌ったバラード。多数のアーティストにもカヴァーされた彼女達の代表ソング。
ピアノ主体でストリングスが効果的に使われていて、シンプルでわかりやすく切なさがしっかりと表現されている。間奏のファンファーレみたいなアレンジも良さを引き立てている。
長く愛されるエバーグリーンな曲と言えるような風格が漂っている。
★★★★★★★☆☆☆

*9位 背景ロマン / 19
(週間売上:3.5万枚)

越えて 届け 先へ 届け
温もりを大切に

登場2週目。通算6枚目のシングル。
21世紀へのメッセージをテーマにしていて、19の持ち味である優しさや暖かみが存分に発揮されたポップナンバーになっている。
19名義の作詞作曲は本作が最後になる。これ以降はメンバー単独の作詞作曲になり、それぞれの作風が如実に表れる。ゆえに、初期の19らしさというものが感じられるのはこの曲が最後と言える。2年後の解散までのプロセスを踏まえてこの曲を聴くと、どことなく切なく聴こえる。
★★★★★★★☆☆☆

10位 クリスマス・イブ / 山下達郎
(週間売上:3.4万枚)

雨は夜更けすぎに
雪へと変わるだろう

登場3週目。80年代の名曲がマキシシングルとして初めてリリース。クリスマスが近づき、91年12月以来約9年ぶりのTOP10入り。
これに関して言えば、クリスマスのスタンダードナンバーとして現在も君臨し続けているので、特に何も語ることはない。
大瀧詠一氏の言葉を借りれば、これから100年先もしっかり愛される名曲中の名曲と言える。
★★★★★★★★★★


そして、TOP10圏外の注目曲も。今回はクリスマスソング中心に。

11位 angel song ―イヴの鐘― / the brilliant green
(週間売上:3.2万枚)

蒼白い この雪空に
X'masを告げる 天使の鐘が響く

登場4週目。ドラマ「真夏のメリークリスマス」主題歌。
ブリグリとして久々のヒットとなった今作。
イントロからAメロの不安定なディミニッシュを使ったコード進行がいい味を出している。
そしてサビではパンチのあるバンドサウンドが効いていて、そこに川瀬智子の甘く気怠い声が絶妙にハマり、アンバランス感が心地よく聴こえる。
この感じは、かつてリリースされた中山美穂の「Mellow」やマイラバの「ANIMAL LIFE」にも通ずるものがある。
スローテンポでゆったりと流れてゆき、クリスマスの情景が目に浮かぶ秀逸なナンバー。
★★★★★★★★★★

14位 Silent Night~White Christmas / 小柳ゆき
(週間売上:2.7万枚)

I'm dreaming of a White Christmas

登場4週目。「Koyanagi the Christmas」としてクリスマスのスタンダードナンバーをカヴァーしたコンセプトシングル。
A面では「きよしこの夜」と「ホワイトクリスマス」の2曲をメドレーで、カップリングには「ママがサンタにキスをした」のカヴァーをそれぞれ収録。
この年の春に洋楽のカヴァーアルバムをリリースし、その続編とも言える今作。
やはり歌が上手い。厳かなゴスペルミュージックにソウルフルな歌声がしっかりと映えて、聴き応え充分。
パーティーのノリではなく、本来のクリスマスの雰囲気を味わうには打ってつけの作品。
★★★★★★☆☆☆☆

35位 We are. / Do As Infinity
(週間売上:0.9万枚)

この世界に 君と出会えた
君が来てくれた 聖なる夜

登場2週目。化粧品のCMソング。
この音楽ユニットの楽曲製作の主導を握る長尾大は、浜崎あゆみなど、デビュー前からエイベックス系アーティストに楽曲提供を行っていた。それもあって、この時期の売れ線と言えるポップな良曲を産み出す力に長けていた。それが顕著に表れたのが、自身がフロントメンバーとして最終参加したこの曲だと思う。
鈴の音と伴都美子のハイトーンボイスから入る曲頭からガッツリ心を掴まれる。
キャッチーなサビや、Bメロのリズムパターン、Cメロの転調など、美味しい所が満載の名曲。個人的にDo Asの中で一番好きな作品だ。
★★★★★★★★★★

それでは、メリークリスマス。